ピンクゴールドメッキが特長的なSEアーティストモデル。ベルに近い部分に装備された低音補正キーを外すと(実際には素人がキーを外すことは厳禁なので絶対に真似しないように)写真のようなM字型の整流部材の姿を見ることができる。最低音のミやファの音程補正のために装備された小さな音孔だが、その小ささゆえに生じる風切り音などの弊害を軽減するための工夫が、この極小の部材に秘められているのだ。手作業で丁寧に挿入されるこの小さな部材が、手にしたアーティストの可能性を大きく広げてくれるのだ



ヤマハは山葉寅楠(やまは とらくす)が1887年(明治20年)に創業。その後、合資会社山葉風琴製造所となり、1897年には日本楽器製造株式会社が設立された。現在の社名ヤマハ株式会社に変更されたのは創業100周年の記念すべき年となった1987年のこと。
クラリネットの分野では、1967年から合資会社日本管楽器製作所(通称ニッカン)の製作に協力を開始。「ヤマハ」ブランドを示すYが付与された最初の楽器はYCL-22(1968年)。ニッカンを吸収合併したのち、1970年に発売したクラリネットがYCL-32だった。そこからYCL-61まではニッカン製品の改良型だったが、独自の開発は1974年に発売したクラリネット初のカスタムモデルYCL-81から。
YCL-81までは立ち上がり音孔をあと付けする加工法が行われていたが、その後一体成形加工を採用したCSシリーズなどが登場する。音孔のアンダーカットが施されるようになったのもYCL-81以降のこと。アンダーカットおよびヤマハのクラリネット製造工程についてはこちらをどうぞ!
同シリーズ現行モデルは YCL-852II(B♭管) YCL-842II(A管)となっている。
世界市場を視野にいれ、ギリシアやローマなど欧州神話の名前をイメージして命名されたCS(歌を象徴するローマ神話の女神「カネウス」に由来)SE(ギリシア神話の月の女神「セレーネ」に由来)AE(ギリシア神話の恋の女神「アフロディーテ」に由来)があり、またCSの兄弟モデルとして開発されたCX(型番はシャリュモーをイメージして設定された)も同時期に発表された。
国産管楽器をプロが使うというのは夢の夢だった時代、ヤマハはそれを目指してカスタムクラス開発には、数多くのプロフェッショナルの協力を仰いだ。
CS開発にはドイツで研鑽を積んで帰国し、NHK交響楽団に入団したばかりの故・内山洋氏(2011年1月7日没)が担当。YCL-81をベースにドイツの音をイメージして開発されたのがCSシリーズだ。
SEは、現在も「NSO(ノンストリングオーケストラ)」や「ドリームリード」など旺盛な発信力を発揮している藤井一男氏が監修した。氏の熱い気持ちがフラッグシップSE ArtistModel開発を後押ししたのである。

※本稿は「バンドライフ」2017年5月号(4月10日発売)掲載の記事をもとに、事実誤認部分を訂正し加筆したものです。